once again
「着いたけど、どうするんだ?」

車の中で、一通り説明を受けた天城さんは、どう動くのか聞いてきた。

「そうよね、会場出ちゃったし…」

「涼香さん、専務の携帯知らないんですか?」

「え?携帯ですか…」

知ってるけど、呼び出せる訳ないし…

「天城、何言ってるのよ。呼び出せる訳ないじゃない」

「いや、呼び出すんじゃなく。まだ会場ですか?って聞くんだよ。言い訳なんてなくはないんじゃないか?涼香さんどう?」

天城さんと瑠璃が私を見た。

「やってみる…」

「涼香大丈夫?」

「う、うん」

そう言いながらも、私の手は震えていた。
瑠璃はその手を握ってきた、顔を見ると、優しく笑ってくれた。

「大丈夫。涼香なら大丈夫」

「うん。やってみる」

そう言って、私は専務に電話をかけた。


何回かコールが聞こえた…
出ない、
やっぱり無理か、電話を切ろうとした、その時…

「もしもし?高瀬か?」

「っ、専務…すみません。こんな時に電話して…」

「いや、いいんだ。今彼女がいないから話は出来るんだ。もうすぐ帰らせるつもりなんだ。この後、会えるか?俺から電話しようと思ってたんだ。かけてきてくれて助かったよ」

「え?あ、そ、そうなんですか…はい、はい、ラウンジですね…はい。分かりました、じゃ後で」

電話を切った私は、大きな息を吐いた。
心配そうに顔を覗き込んでいた瑠璃が

「どうだった?」

「もう、会場は出たって。今、8階にあるラウンジで飲んでるらしいけど、帰らせるって…そこに来て欲しいって」

その事を聞いた瑠璃は少し考え込んだ。

「専務って、お酒強い方?」

「一緒に飲んだ事がないから、分からないけど強いとは思うよ。室長との話聞いてる限りでは…」

「やばいかも。夏帆の事だから、薬入れる可能性あるよ」

「え?薬?ええ?」

「そんなの、専務狙いで来てるんだったら、既成事実作るに決まってるでしょ。噂は聞いた事あるのよ、私」

「ど、どうしよう。瑠璃」

戸惑う私に、瑠璃は

「とりあえず、ラウンジに行こう。潰れてしまってるなら、天城、担いで」

「え?俺がか?」

「当たり前じゃない。私達が出来ないでしょ。それに私にさせる気?」

「ごもっともです。お前には負けるよ」

このまま、長く車の中でいられないと思った私達は、ラウンジに向かった。
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