恋・愛至上命令。
『寂しくなったらいつでもおいで。・・・優しく泣かせてあげるよ』

密かに交わした最後のキスは。
ありがとう。と。いつか彼の手を取ってくれる誰かに出会えるよう、願いを込めて。

『またね瀬里』

「さよなら」でも「元気で」でも、なく。
涼やかな笑顔で締め括った晶さんに、懐かしさだけで会えるようになるのはまだ先の話だ・・・って。消え残った痛みが教えてた。




「・・・で? 瀬里姉は前に言ってたヤツと、どうにかなってんのかよ?」

幸生にとってその質問は、単なる話の流れだったかも知れない。わたしにとっては。人生を懸けたって言ってもいいくらいの選択を迫られた瞬間だった。

まだ曖昧に誤魔化しておくべきか、今ここですべてを明かしてしまうか。
そして。ぐっと掌を握り締める。

「今は付き合ってるし、将来もちゃんと考えてるから」

「ふぅん。どこのどいつと?」

やれやれとでも言いたげに、前髪を掻き上げた幸生にじゃなく。上座に腰掛けたお父さんに向かい。

「・・・・・・わたしはずっと凪が好きなの。結婚したいのも本気です」


覚悟を決めてきっぱりと宣言した。
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