恋・愛至上命令。
「・・・冗談?」

怪訝そうな声音で反応したのは、向かいに座った幸生だけ。お父さんは腕組みして瞑目したまま何も答えなかった。・・・・・・予想してたみたいに。

思わず隣りのお母さんを見やると、ここが正念場だとでも言うように毅然とした眼差しをスッとこっちに流し、口の端に仄かな笑みを称えていた。

凪のことは近い内にきちんと話すつもりだった。お父さんに言われそうなこともシミュレーションして、自分なりに答えは出してた。譲れないのは凪を諦めないってことだけ。その為なら。

着物の帯で否応なく引き締まった姿勢に、さらに背筋を張って。真っ直ぐお父さんに言い募った。

「誤解しないで欲しいの。好きだって言ったのはわたしで、凪はずっと応えてくれなかった。自分には資格も権利もないって。・・・でもどうしても諦められなかった。お父さんとわたしの板挟みで凪だって苦しかったと思う。それでも許してほしいの、お父さんに。・・・お願いします、凪と結婚させてください」

はっきりと意思を口にして、わたしは静かに頭を下げた。
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