恋・愛至上命令。
お父さんはしばらく黙り続け、目を開けてこっちを見るとようやく口を開く。

「条件がある」

ああ、いいよ。なんて都合よく返って欲しいとは思ってた。やっぱりそうは行かない。
聴かなければ話は先に進まないのだから、腹を据えて冷静に質問を返した。

「条件・・・て、どんな?」

「言っとくが・・・なあ瀬里。大島が気に入らねぇって話じゃねぇんだ。お前が惚れ込んでるのなんざ、ハナから見通してる。いずれ言い出すだろうと思ってたさ」

腕組みを解き、お父さんはどっしりと開いた膝の上に両手を置く。

「だがな。一緒になってこの先、お前や生まれて来る子供を養ってくだけの技量ってモンが、大島には足りてねぇ。それを一刀両断にするつもりはねぇよ。場数が少ねぇのは、瀬里を任せきりにしてきたこっちにも一端はある。これから手柄と結果を残せりゃ、文句なく認めてやろうって話だ」

そこでだ、と言葉を切り。ここからが本題だと窺わせて、おもむろに続けた。

「大島はしばらく他所に預からせる。知り合いが手が足りねぇって言うんでな。・・・ウチはもう、跡目が決まって幹部も出揃ってる。出世も頭打ちだ。なら外でのし上がってみせるしかねぇだろう」
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