恋・愛至上命令。
オロオロする多紀さんに呼ばれたお母さんがわたしを部屋に連れ帰り。娘に泣かれたのは堪えたのか、さすがのお父さんも落ち着かない様子で廊下をウロウロしていたそう。

「・・・お父様からの伝言。“三年の約束”は明日からですって。大島に言いたいことがあるのなら電話でも何でも、残さずに話しておしまいなさい。あの子も不器用ですからね、もちろん瀬里が一番わかっているでしょうけど」

ソファに突っ伏して、鼻をすすり上げてるわたしの髪を撫で、お母さんが優しい声音で言い聞かせるように。

「瀬里に黙って行ったのは、別れが辛いからでしょう。大島もようやく失いたくないものを見つけられたってことね・・・」





一人になって。スマホを手にひとつ深呼吸。
履歴から『凪』を呼び出し、指でタップする。呼び出し音が6回、7回。

『・・・・・・はい』

電話だともっと低く透る声。

「凪」

わたしの呼びかけに。凪は一瞬、向こう側で気配を震わせた。気がした。
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