恋・愛至上命令。
今日は寄り道しないで、駅から真っ直ぐにマンションに向かった。
夜ご飯のメニューは冷蔵庫にあるもので、親子丼に決定してる。あとは作り置きのかぼちゃの煮物もあるし。
ちょうど7時前くらいで、前には同じ方向を歩く帰宅途中のサラリーマンや、制服姿の女子高生の姿も映る。家も立ち並んでて街灯も明るいから、暗くなってもそれほど怖さを感じない。
マンションのエントランスが見えて来て、肩掛けのバッグの中に鍵を探しながら。ふと。そこに立っている人影に気が付いた。
入り口の自動ドアの手前で、邪魔にならないようにか脇に寄って佇んでる。逆光で顔はよく見えなかった。黒っぽいスーツに黒っぽいネクタイの長身。
立ち止まって。わたしはじっとその人を見つめた。
向こうもこっちを見ていた。
時間が止まったみたいに、どっちも微動だにしない。
影が不意に揺れて。近付いてくる。
立ち尽くすわたしの前に。ゆっくりと立って見下ろす闇色の眼差し。
声もなく、ただ見上げてるだけのわたしに静かに頭を下げ。
「・・・・・・ただ今戻りました。瀬里お嬢」
凪は仄かに眸を和らげて。そう言った。
夜ご飯のメニューは冷蔵庫にあるもので、親子丼に決定してる。あとは作り置きのかぼちゃの煮物もあるし。
ちょうど7時前くらいで、前には同じ方向を歩く帰宅途中のサラリーマンや、制服姿の女子高生の姿も映る。家も立ち並んでて街灯も明るいから、暗くなってもそれほど怖さを感じない。
マンションのエントランスが見えて来て、肩掛けのバッグの中に鍵を探しながら。ふと。そこに立っている人影に気が付いた。
入り口の自動ドアの手前で、邪魔にならないようにか脇に寄って佇んでる。逆光で顔はよく見えなかった。黒っぽいスーツに黒っぽいネクタイの長身。
立ち止まって。わたしはじっとその人を見つめた。
向こうもこっちを見ていた。
時間が止まったみたいに、どっちも微動だにしない。
影が不意に揺れて。近付いてくる。
立ち尽くすわたしの前に。ゆっくりと立って見下ろす闇色の眼差し。
声もなく、ただ見上げてるだけのわたしに静かに頭を下げ。
「・・・・・・ただ今戻りました。瀬里お嬢」
凪は仄かに眸を和らげて。そう言った。