恋・愛至上命令。
高校二年生の少女から手渡された贈り物を、あの時は迷惑にすら思ったのだ。棄てる訳にも行かず、なにも言わず指導係の本条に差し出したことを瀬里が知ったら、自分を軽蔑するだろうか。
凪は自分の出来に満足そうな瀬里を窺って、それだけが唯一の後悔だと苦く思う。
翌日、学校へ送る車の中でちらちらと落ち着かない視線を向ける彼女に、『・・・美味しかったです』と心にもない謝辞を伝えた時。今と変わらない、花のように華憐な満面の笑みが無邪気に返った。
『じゃあ来年もその次もずっと、わたしが大島さんの誕生日にあげるわ』
その意味が一瞬分からなかった。まるで自分が望まれているように聴こえたからだ。
『ずっと・・・ですか』
『ずっとです。だからずっと居てくれないと、ダメですから』
瀬里が頬を仄かに染めて顔を背けたのを、凪は信じられないものを見た気がした。この少女が自分に好意を寄せている理由が全く思い当たらない。
組長の娘である常識を考えても取り合わずに流しておく。冷静に思う反面どこかで、瀬里を釘付けにしておきたい欲求に駆られた。自分だけを見つめさせたい欲望・・・渇望。それが何なのか、凪自身も分からないままで。
もう惚れていたのだと、タルトを食べ切って口の中を珈琲の苦みで上書きしながら、凪は今さら観念した。
凪は自分の出来に満足そうな瀬里を窺って、それだけが唯一の後悔だと苦く思う。
翌日、学校へ送る車の中でちらちらと落ち着かない視線を向ける彼女に、『・・・美味しかったです』と心にもない謝辞を伝えた時。今と変わらない、花のように華憐な満面の笑みが無邪気に返った。
『じゃあ来年もその次もずっと、わたしが大島さんの誕生日にあげるわ』
その意味が一瞬分からなかった。まるで自分が望まれているように聴こえたからだ。
『ずっと・・・ですか』
『ずっとです。だからずっと居てくれないと、ダメですから』
瀬里が頬を仄かに染めて顔を背けたのを、凪は信じられないものを見た気がした。この少女が自分に好意を寄せている理由が全く思い当たらない。
組長の娘である常識を考えても取り合わずに流しておく。冷静に思う反面どこかで、瀬里を釘付けにしておきたい欲求に駆られた。自分だけを見つめさせたい欲望・・・渇望。それが何なのか、凪自身も分からないままで。
もう惚れていたのだと、タルトを食べ切って口の中を珈琲の苦みで上書きしながら、凪は今さら観念した。