恋・愛至上命令。
混乱しているわたしの肩を抱いたまま。アキラさんは全く動じてない様子で穏やかに続ける。

「番犬としては優秀だと思うけどね。セリを泣かすだけなら、黙ってるつもりはないよ。俺を見くびらないで欲しいな」

「・・・それは一ツ橋二の組の高津晶(たかつ あきら)として・・・という意味ですか」

「そうだね。それでも構わないかな。肩書でセリが俺のものになるなら」

二人が淡々と、わたしが全く知らなかった事実を明かしてくのを。まるで自分だけが画面の外から、テレビでも観ているかのように。目の前で起きてることが現実なのかすら。

一体どこからが本当・・・? アキラさんは誰? わたしが春日組組長の娘だって知ってた・・・? ぜんぶ最初から・・・・・・?

何かが弾けそうになって、せり上がってきたものを喉元から吐き出しそうになった時。

「黙ってたのは、瀬里にただの俺を知って欲しかったからだよ」

苦し気な眼差しがわたしを振り返って。悲しそうに微笑んでいた。
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