恋・愛至上命令。
「大島が分をわきまえてるのは当然と言えば当然だ。塩を送るつもりは無いから、これからは正攻法で行くことにしようか。最後までそうやって黙って見てるといいよ」

目を細めてそんな風に言ったあと。わたしに傾けたのは、いつもと変わらない柔らかな眼差し。

「本当は返したくない気分だけどね。瀬里から俺に逢う自由を奪えるものなんて無いから、・・・これからは好きにおいで」

綺麗な顔が寄せられ、唇に押し当てられた吐息。
「おやすみ」と淡い笑みが滲んで腕を放された。

「・・・おやすみ、・・・なさい」

何だかまだ戸惑いが消せないまま。
来た道を戻って行く晶さんの背中が、闇に溶けてくまで目で追いかけ。わたしは、おもむろに凪に向かい合った。

「・・・後を付けてきたって、どういうつもり? 今まで見ないフリしてきて、いきなり何なの? なんで晶さんのこと知ってて黙ってたの?」

闇色の眸を見上げると一息に問い詰め。きつく睨み据えた。
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