恋・愛至上命令。
今まで味わったことがない気怠い微睡みの朝。軽快な電子音を奏でるスマホのアラームで、重たい瞼をようやく開ける。

何も身に着けてない素肌のまま、羽根布団に包(くる)まってるってことと。意識が落ちるまでは隣りに凪がいたこと。今日が何曜日だったかをいっぺんに頭に思い浮かべ。深く息を逃す。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

こうなるのを望んでたのは自分だし、思い出してもなんかもうシアワセっていうか、切ないっていうか。うー、ナニこれ。心臓が全く落ち着かない。それ以上に。・・・・・・・・・どんな顔していいか、全然ワカラナイ・・・・・・。

晶さんとは平気なのに、こんなの初めてで。真剣に途方に暮れる。
普通にするって、えーと、でもそれじゃなんか男慣れした女みたいだし。かと言って変に意識したら、凪だって困るじゃない~っ。

枕に顔を埋めて呻ってたら。ノックの音にも気付かずに不意にドアが開き、頭の上で低く透る声がした。

「・・・起きてくださいお嬢さん。遅刻しますよ」

窓際に寄っていくスリッパの足音。カーテンを引く衣擦れの音。差し込む光りを感じて、ゆるゆると顔を上げれば。いつもと寸分違わない、無表情の凪がベッドの脇に立ってて。

「・・・あ、うん。・・・おはよ」

拍子抜けしたような、どこか気の抜けた挨拶をぼんやり返したのだった。
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