恋・愛至上命令。
それから幸生のことや、他の皆んなの様子を世間話程度に訊いてるうちに。車はオープンして半年足らずのショッピングビルの地下駐車場に、吸い込まれてく。

駅からも近く、ファッションやコスメ、雑貨、美容系のサロンも揃った、OL中心に人気のスポットで。確か最上階は夜景が望める展望レストランエリアが話題だったし、屋上には庭園もあって、クリスマスからバレンタインまではロマンティックなイルミネーションも予告されてた。

本条さんはオールバックを手で少し崩してそれっぽい雰囲気を和らげ、圧倒的に女性客が多い中、わたしを上まで連れて行ってくれた。

「瀬里」

中でもスイーツが評判のビュッフェレストランの前で、こっちに向かいにこやかに手を振る母。
今日は髪もハーフアップに下ろして、シックなオフタートルの黒のニットワンピースを着ていた。洋服でも和服でもやっぱりオーラが夜の女帝ぽい。上品で妖艶って意味で。

「一度来てみたかったの、ここ。やっぱり娘とじゃないと来られないでしょ?」

そっと店内を覗けば、ほぼ満席状態。7時前でちょうど混む時間帯なのは想像がつく。しかもウェイティングで既に10人はゆうに超してる。

「お母さん、でもコレすごく並んでるけど?」

待ち時間を考えたらちょっと気が遠くなりそう。回転率はかなり悪いはず。

「やぁねぇ瀬里。席は取ってあるに決まってるでしょ」

微笑みながらわたしを促すと、思ったより広くて席数もある全面ガラス張りの地中海リゾート風の店内へと入って行く。
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