君を借りてもいいですか?
頭の中は雑誌のことでいっぱいだった。

うちの司書さんたちが読んでるぐらいだから同世代の女性もたくさん読んでいるはず。

なんてったって亜矢の雑誌ってすごく人気があるんだもん。

きっと湊人の会社の女性社員も読んでいるに違いない。

最初は書籍化されたらいいなって安易に考えていたけど、こんなに人気があったら

湊人の耳に入る可能性があると言うこと。

でも途中でやめるわけにはいかないから厄介なのだ。

「––り?栞?」

「えっ?あっ……なに?」

「何かあった?心ここに在らずって感じだったけど」

はいそうです。なんて言えるわけがない。

「仕事のことでちょっと」

こんな理由しか思い浮かばなかった。


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