君を借りてもいいですか?
湊人早く来てくれないかな?

そう思うが、彼の姿はまだない。

「ねえ〜嘘はよしたら?」

「え?」

「彼なんて嘘だろ?俺と一緒に行こう」

先輩が私の腕を掴んだ。

元彼だけど、触られるのはすごく嫌。さらわれたくないし気持ち悪いとさえ思える。

「や、やめてください」

腕を払いのけると先輩がチッと舌打ちをした。

「可愛くないところは本当に昔から変わってないね」

虫唾が走るとはこういうことなのだろう。

本当に自分がこんな人のことを好きだったなんて恥ずかしい。

その当時は可愛くないなんて一言も言わなかったのに、別れて数年経ってもう赤の他人になったのに
今さら感を出すなんて……なんでその時に言わないの?

だったら最初から声をかけなきゃいいことじゃない。

沸々と怒りがこみ上げ握りこぶしに力が入る。

その時だった

「栞。遅くなってごめん」
< 114 / 115 >

この作品をシェア

pagetop