君を借りてもいいですか?
「その節はありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ助かりました。でもまさかこんなところでお会いするとは」

「ですよね」

まさかこんな形で再会するとは思いもしなかった。

男性は新郎側の招待客だった。

親族?それとも仕事関係?気にならないといえば嘘になるが、あの時紙袋に入っていた席札に書かれた名前も忘れてしまった。

男性が会場の中に入ると、
「ちょっと!栞?あのイケメンと知り合いなの?」
圭子は好奇心全開。

「ううん。ちょっと話をしたことがあるだけ。名前も知らないし」

嘘ではない。

だけど圭子は式場の中に入る男性の後ろ姿を見ながら未だ興奮気味だ。

「だったら今日、教えてもらえばいいじゃない」

「な、何言ってるの?あれだけかっこよかったら彼女がいてもおかしくないわよ」

でも圭子がそれで納得してくれない。

「いるかいないかは聞いてみなきゃわからないでしょ?なんなら私が聞いてあげても––」

「ちょっと圭子やめて。そもそもああいうイケメンすぎるのはタイプじゃないの。少し遠くで見ているくらいが丁度いいの。だからこの話はもう終わり」

受付業務が終わったと同時に彼に関することも強制終了した。
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