君を借りてもいいですか?
「栞さんも俺と同じで結婚に全く興味がないよね?」

「まあ〜」

すると白石さんが立ち上がった。

「君を借りたい。それも恋人として」

「えええ?ちょ、こ、恋人?」

あまりにも突拍子も無いことを言い出す白石さんに開いた口が塞がらない。

「ごめんごめん。言葉足らずだった。要は縁談の相手が諦めてくれるまでの間、恋人のふりをして欲しいってことなんだ」

言葉足らず以前の問題だ。

会った回数、今日を含めて3回目、そのうちの2回は偶然。そんな人の恋人に?もちろん恋人のふりだってことは理解してる。

でも相手は白石通商の御曹司だよ。荷が重すぎる。

「無理、無理です」

全力で断る。だが相手も引き下がる気配なし。

「何で?」

「何でってそりゃ〜あなたと私では住む世界が違いすぎます。それに白石さんみたいな方なら私なんかじゃなくても頼めば恋人のふりをしてくれる人なんてそこら中にたくさんいるんじゃないんですか?」

これだけ言えば納得してくれるとドヤ顔で訴えた。だが…

「結婚願望のない君じゃなきゃ意味がないんだ」

白石さんは強い口調で訴えるが、どんな理由だろうと出来ることと出来ないことがある。
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