君を借りてもいいですか?
『それから2人で行ったお店の名前も教えてね』

「なんで?」

『栞たちは仮名だけど、2人が行った店を紹介することによってリアリティーが出るのよ。それにお店の宣伝にもなるでしょ?雑誌掲載に関してはこっちで話をするから問題はないわよ』

なんだかすごいことになってない?

「ねえ〜今更だけど、本当にこれ記事にするの?」

『……あのね〜当たり前じゃない。今更何いってんの。この企画は絶対に読者ウケすること間違いなし!どうする?人気でちゃってドラマ化とか…いやいや映画化とかしちゃったらさ〜それだけおもしろい企画なのよ』

スマホ越しだがテンションが高い亜矢の声とは裏腹に私のテンションは下がる一方だ。

だってよくよく考えたら、偽の恋人になって縁談が白紙になることが目的であって、そこに女子の喜ぶようなときめきやドキドキはないと思う。みんなの納得できるハッピーエンド的なものは存在しないような気がしてならない。

それとも亜矢が脚色してハッピーエンドにしちゃうのかな?

どちらにしても結婚はおろか恋愛にも興味のない私が企画の主人公になるのかと思ったら不安しかなかった。
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