君を借りてもいいですか?
「美味しい〜〜」

「だろ?家政婦さんの作るビーフシチューは最高なんだ」

「だからですか?」

「ん?」白石さんはスプーンを持った手を止め、私を見た。

「結婚しないのは」

白石さんはスプーンを置いた。そしてクスッと笑った。

「そうだね。おかげさまでいまの生活に不自由はない。自分ができない事もお金を出せば代行してくれる人もいるしね」

う〜ん金持ちらしい発言だ。私には絶対に言えない。白石さんは話を続けた。

「会社での俺の肩書きって『白石通商の次期社長』なんだよね。みんな腫れ物のように扱うけど、影ではあんな坊々に何ができるのか?とか見かけだけで仕事のできないチャラ男とか結構言われるわけよ。そういうストレスの発散が誰にも邪魔されずにここで過ごすことなんだよ。だから誰にも邪魔されたくないんだ。結婚したくないのはこの生活スタイルをキープするため」

大企業の御曹司ってリッチでなんの苦労もしてないって思ったけど、それなりにあるんだ。

共感するには生活のレベルが違いすぎるから私は黙って聞くだけだった。

だが、

「じゃあ…栞の結婚しない理由は何?」

そいうきたか…
「私ですか?私はとにかく一人でいることが好きなんです。他人に気を使わなくて済むし…それに今まで彼氏がいかったことで不憫に感じた事もないです。……でも、もしかしたらそれは本気で誰かを好きになったことがないからかもしれないですね。もちろん彼氏がいたこともあるんですけど…あまりいいことなかったんで」

本気で誰かを好きになったことがあれば結婚願望もあったかもしれないけどね…

「じゃあ…今まで付き合った男の数は?」
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