君を借りてもいいですか?
「どうした?」

「何でもないです。っていうか、こんな負け戦に何か秘策でもあるんですか?」

すると王子らしからぬ不敵な笑みを浮かべた湊人が踏ん反り返るようにソファの背にもたれた。

「ある。要は相手に付け入る隙を与えないぐらいにラブラブなところを見せつけるんだよ」

「え?」

「え?じゃなくて、そのための恋人役だろ?」

「は〜。で?恋愛感情のない相手と付け入る隙を与えないくらいラブラブって一体どんなことするんですか?」

「簡単に言えば、普通のカップルがするようなことだろ?極端な話、付き合いたてのバカップル?」

淡々と話す湊人に私の目は点になった。

だって私は単なる代行だと思っていた。「お付き合いしてます〜」って湊人の横に立っているだけでいいとめちゃくちゃ安易に考えていた。

「ちょ、ちょっとそんなの無理です。それこそプロに頼めばいいじゃない。そんなバカップルって」

頭に中では人目もはばからずベタベタしたりキスしちゃったり、手を繋いじゃったり…しばらくご無沙汰シチュエーションが脳裏に浮かんだ。
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