君を借りてもいいですか?
Lesson2・・・嬉し恥ずかし温泉旅行?
どこかで見たんだよね〜どこだっけ?
気づけば絵よりも目の前にいる女性の方が気になっている。
「お母様こっちこっち」
絶対に私が使わないような丁寧で品のある話し方。これはお嬢様って人だね〜なんてチラチラ観察していると、

「もう、結愛花さんたら、急にいなくなってしまうんだから」

へー。彼女のお母さんだろう。高級そうな着物に品のある歩き方…と感心していたが、突然ハッとした。と同時に緊張が走る。

あれこの名前どこかで聞いた。

結愛花さんって呼んだよね……結女花……結女花?

初めてあったのに、どこかでみたことがある。そう思っていた疑問がパズルのピースがはまるように解けていた。

まさかこんなところで湊人の縁談相手に会うなんて。

なんか、ここにいてはいけないような気持ちになった。

だって、この人の思いを断ち切らせることになるのだから…絵なんか見てる場合じゃない。

ちょっとスピードアップして美術館を出ようと私は静かに立ち上がった。

するとなぜか結愛花さんと目が合ってしまう。

まだ彼女は私の存在なんか知らない。ここは平常心、平常心と心の中で唱え、彼女に会釈をして次の展示室へと移動した。
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