君を借りてもいいですか?
旅館の門の横にある宿泊者用の駐車場に車を止めて、旅館に入ると女将がで迎えてくれた。

「急に頼んで悪かったね」

「とんでもございません。よくいらっしゃいました。お部屋はいつものをご用意しておりますのでどうぞ」

キョロキョロと物珍しそうに見ている私を見ていると、女将さんと目が合う。

「古いでしょ?この旅館、明治18年に建てられた旅館なんですよ。」

「いえいえ、私こういう明治、大正の建物が大好きなんです」

実は古い建物が大好きな私。特に明治、大正に建てられた建物が大好きなのだ。だって文豪たちがこういうところで執筆してそうなんだもん。あ〜ロマンを感じる。
さっきまでの複雑な気持ちは吹っ飛んでいた。

「気に入ったみたいでよかったよ」

湊人が靴を脱いだので私も靴を脱ぐ。

「うんうん。ワクワクしちゃう。あのー女将さん?」

「はい?」

「ここに有名な文豪が泊りに来たことって…」

「ございますよ」

女将が目をキラリと輝かせる。そしてここに宿泊した文豪たちの名を聞き私はさらに興奮する。

この宿に名だたる文豪たちが泊まって名作を生んだかと思うと、自分の使命も忘れ胸が弾む。
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