君を借りてもいいですか?
案内された部屋に入り、私の胸はさらに高鳴った。

時代を感じさせる和室は、窓も今の時代のサッシではなく木製でその当時のままだった。

なんだかタイムスリップしたような気持ちになる。

「気に入っていただけましたか?」

「は、はい」

きっとこの窓辺の椅子に座って、そこから景色を眺めながら文豪たちは作品を生み出していたのかもしれない。いや、少しペンを置いて日々の疲れを癒していたのかもしれない。

想像しただけでワクワクする。

「お料理はすでにご用意しております。急だったのでご満足いただけますか……」

心配する女将に湊人は、
「無理を言ったのはこっちの方、料理まで用意してくれただけでもありがたい」

私も同じ思いだったので、お礼の意を込めて頭を下げる。

「そう言っていただけて安心しました。あちらにお布団の方準備させていただきましたので……」

今の今まで気分は明治大正の乙女の気分だったのだが、お布団という言葉で一気に我に返る。

すると奥の部屋に布団が敷いてあったのだが…な、な、なんと布団と布団の間に隙間なし!
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