君を借りてもいいですか?
う、嘘でしょ?やめてよ。

泊まるのは仕方ないけど寝室は別々でしょ?

「あのお客様、何かございましたか?」

私の動揺する顔を見て女将が心配そうに尋ねた。

「え、え?……いえ、あの……」

どう返事したらいいのかと戸惑っていると湊人が私の肩に手を乗せた。

「ごめんね女将。実は2人きりの旅行は今日が初めてで彼女ちょっと緊張してるんだよ。……な?栞」

優しい口調だが目は笑っていない。

「は、はい。緊張しちゃって」と言うしかなかった。



予め食事の準備が整っていたので私たちは先に食事をしたのだが、一体こんなことしてお互いの本質とやらがわかるのだろうか?

旅館そのものは興味をそそるものばかりだが、それ以外はどうもテンションが上がらない。

「美味しくない?」

「え?」

湊人が箸を置く。
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