君を借りてもいいですか?
「それとも…こんなことして本物の恋人の様に見せかけることができるのか?って思ってるでしょ」

私は黙って頷いた。

「でもね、短い時間でも色んな発見はあったよ。例えば…嬉しいことがあると目が大きくなるよね。逆に嫌なことがあると絶対に俺と目を合わさないようにする。好きな食べ物は後に残すタイプで嫌いなものもあるみたいだけど、頑張って食べる。そういうところは可愛いね…見てて飽きない」

私は思った。この人は本当にモテる。

それはルックスがいいと言うだけではない。その口だ。

嘘か本当かわからないけど、相手がドキドキしちゃうことをさらりと言っちゃうとこ。

本人がその気でなくてもこんな事言われたら勘違いする女子は多いな。

でもね、私は言われ慣れてないから困る。

「そう言うのやめませんか?」

「え?」

「だから、思ってもいないこと言われて不覚にもドキドキしちゃったら私たちが偽物だってばれますよ」

「ドキドキしちゃったんだ」

湊人がニヤリと笑う。

「だから––」

顔がカーッと熱くなるのがわかった。

「嘘じゃないよ。そうやって顔を真っ赤にするところも可愛い」

すでに顔は火照っっているのに今のでさらに顔が熱くなる。

「ごちそうさまでした!」

私はすくっと立ち上がった。

「栞?」

「お、お風呂に入ってきます」
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