君を借りてもいいですか？
「あ〜〜。いい湯だな〜」

結局、客室の露天風呂に入った。湊人の言った通りここの温泉はツルツルしたお湯だった。手触りも良く滑るように滑らかだ。

こんな贅沢は初めてかもしれない。

私はふと湊人がいる部屋の方を見た。

きっとこの宿泊代だって私の住んでいるアパートの家賃よりも高いだろう。結婚したくない気持ちはわかるけどここまでする必要があったのか？

しかも仕事を持ってきてまで泊まる価値はあった？

彼とはまだ数回しか会っていいない。だから恋人役は全く板についていない。

そもそもこの恋人役って私にかかっているんだよね。多分、湊人は大丈夫だろう。そつなく私を本物の彼氏役を演じるだろう。

問題は私。

短期間の恋人役でも私がちゃんと恋人役をこなせれば多分、そこそこいけそうな気がする。

結婚願望がないと言っていた割にはすごく優しいし、チャラくない。むしろ湊人は結婚してもいい旦那さんになると思う。

でも当の本人は結婚したくない。だったら私がちゃんと割り切って早く彼の恋人役に徹すれば湊人の負担も減って仕事にも集中できる。

そしたらこんなお金のかかることもしなくて済む。

そして早期解決できる。

ここはやっぱり腹をくくって恋人役になりきるべき？

そうとなったら善は急げ……私は勢いよく立ち上がった。
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