君を借りてもいいですか?
確かに嘘を見抜かれないためにリアリティーは必要だけど、なんだか自分が試されているように思えてしまう。

「もしかして…彼の方が栞に事を好きになっちゃったりして?」

「ないないない。絶対にないって」

全力で否定するも亜矢の私を見る目は怪しいといっているようだった。

「で?実際どうなの?距離は縮まった?」

話を戻す亜矢の顔は仕事モードだ。

「そりゃ〜少しはね。だけどなにを考えてるのかはわからない。私的にはこの偽の恋人は早めに終わらせたいんだけど」

「そお?別にいいじゃん。擬似恋愛できるんだし」

いやいやそう言う問題ではない。当初の私の計画とは随分かけ離れているのだ。

「怖いの」

「怖い?」

おひとりさまでもいいと言う気持ちに変わりはない。

だけど、いくら偽物とはいえ自分の生活の中に他人が入り込むと、いろんなリズムを崩されるのだ。

生活のリズム、感情のリズム…

今の私は完全に湊人によって乱されているのだ。
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