君を借りてもいいですか？

亜矢との打ち合わせから１週間が経った。

仕事が終わり、スマホを見るとメールが１件。亜矢からだった。

原稿ができたからデータを送ったとのこと。

一体なんて書いてあるの？下手なこと書いてないよね。

いてもたってもいられず猛ダッシュで帰った。

家に帰るとスマホに送られたデータをパソコンに移した。

だって、大きな画面の方読みやすいからだ。

緊張のせいかパソコンの前で正座しながらクリックする。

タイトルは「君を借りてもいいですか？」

これって湊人が私に言った言葉と非常に似ている。

そして本文はというと湊人は智也という名前になって、私はミノリというカタカナの名前になっている。

栞とミノリ…ん〜似ているようで似ていないような…

智也の設定は不動産会社の御曹司、ミノリは大型書店勤務。

そして連載１回目は智也とミノリの出会いから偽の恋人になってほしいというところまでが書かれている。

名前や仕事は違うが、亜矢の文章はまるで私たちの様子を近くで見ていたかのようなリアリティーを感じる文章だった。初めて出会ったバーは店舗情報まで載っていた。