君を借りてもいいですか?
な、なんなの?

湊人は結婚したくないから私に偽の恋人を頼んだんでしょ?

ここにきてからの湊人の一連の行動や言葉は明らかに結婚したくない人の行動ではない。

結婚っていいなって思ってる人みたい。

だったら別に私じゃなくてそれこそ結女花さんでもいいのでは?

そうなったら私は必要ない?

そう思った時だった。胸の奥が何かに掴まれるような痛みを感じた。

「うわ〜美味しそう」

「リクエストが私の作れるもので良かったです」

「俺、昔からオムライスが大好きでね。でも、家政婦さんに作ってもらったことないんだよね」

「え?なんで?」

「なんか子供っぽくない?いい大人がさ〜オムライスなんて」

意外だった。恥ずかしくて言えなかったってことなんだろう。

「じゃあ〜なんで私には言えたの?」

湊人は私の顔をじっと見つめると、満面の笑みを浮かべる。その顔がなんだか少年のようでドキッとしてしまう。

「栞だから」

え?私だから?私が湊人にとって特別だからと言われているみたいでなんだかドキドキして耳が熱い。

「もう、意味わかんないんだけど!それより早く食べないと冷めちゃうよ」

ドキドキしているのがバレてしまうのが怖くてはぐらかした。でもドキドキは治らなかった。

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