君を借りてもいいですか?
湊人はペロリとオムライスを平らげた。

私も食べ終えるとすぐに後片付けをする。

あまり遅くなると終電もなくなるし、明日は仕事だ。

急いで片付けを済ませ帰り支度をしていると湊人に呼ばれた。

「どうしたの?」

「こっちきて飲まない?」

「え?でも––」

帰るから…と言おうとしたのだが、すでにグラスにワインが注がれていた。

おまけにチーズの盛り合わせが乱雑に置かれてて、結局こういうのの積み重ねがさっきの状態になったのだろうと納得できた。

でもお金持ちの御曹司だからもっとすごく優雅な生活をと思っていたけどそうじゃないことに
親近感が湧いてくるのも事実だった。

ってそんな悠長なこと言ってられない。

「湊人私もう––」

「おいで」

帰ろうとする私を引き止める湊人の優しい声に不覚にも胸が高鳴ってしまった。

まるで魔法にでもかかったかのように私の足は玄関ではなくリビングの方へ向かっていた。
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