君を借りてもいいですか?
いきなり婚約者のふりをしろと言われたかと思えば今度は家政婦?

一体、この人は私をなんだと思ってるのだろうか?黙っていればなんでも言うことを聞く都合のいい女とでも思っているの?

「嫌です」

即答するも湊人は引き下がる気配なし。

「頼むよ」

「い、や、です。慣れない婚約者のふりでも大変なのに家政婦までしろだなんて」

「家政婦だなんて思ってないよ」

もう訳がわからない。とてもワインなんか飲める雰囲気じゃない。

だが湊人は余裕の笑みを浮かべている。

「だったら何なのよ」

「じゃあ、言い方変えるよ。同棲しない?」

「はあ?」

目が点だ。婚約者の次は同棲?この人は自分で何を言っているのかわかっているのだろうか?

「ねえ、同棲って意味わかってる?」

「わかってるよ。わかってるからこそ提案してるんだよ。ルームシェアじゃなく同棲ね」

さらに目が点になった。

期間限定、縁談を断りたいがための偽の婚約者に使う言葉とは思えない。

せめてここはルームシェアじゃないの?…ってルームシェアでも躊躇するけど。

「何で私があなたと同棲しなくちゃいけないの?」

さあ、私が納得できるように説明できる?
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