突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
「確か、女の人は離婚しても半年間は再婚できないんでしたよね?
……だったら僕、あなたと入籍できる日まで待ちますから」
原さんは表情の読めない顔で、わたしを見つめる。
「ただ……うちの親にはあなたが『再婚』だってこと、黙っててほしいんです」
……ちょっと、意味がわかんないんですけれども。
「僕、母親に『あなたと結婚する』って言ってしまったんですよ。
……まさか、プロポーズして、あなたに断られるなんて思いもしなかったから。
だって、あんなににっこりと僕に笑いかけてくれていたのに」
……いやいやいや、あれは「ビジネススマイル」だから。
「母があなたに会いたいと言って、上京してくるんです。すっごく楽しみにしてるんです。
本当は田舎で結婚式を挙げてもらいたいのに、こっちで挙げてもいいって言ってくれてて、上京した際に式場も決めてしまおうって張り切ってるんです。
……うちの母は、僕が幼い頃離婚してから女手一つで僕を育ててくれたんです。
井筒さんはご両親を亡くして自身の親の面倒をみる必要はないでしょ?だから、ゆくゆくは母と同居して、老後を任せられる最適の人なんですよ。
……なのに、今さら、結婚しないって、そんなのありえないでしょう?」
原さんはそう言って、口元を歪めてうすく笑った。
……いやいやいや。
そんなの、わたしの方がありえない話だからっ!