突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
「……櫻子、左手貸して」
シンちゃんは今度はドラックストアのレジ袋から、湿布薬を取り出した。
わたしの左手首は、先刻原さんからきつく掴まれたせいで、彼の指の跡が真っ赤になってくっきりとついていた。
すぐにその上に湿布をするのかと思えば、「警察に説明するときの『証拠』になるから」と言って、シンちゃんはスマホで何枚か写真を撮った。
「ほかにどこかケガはない?」
シンちゃんの心配そうな顔に、わたしは首を振る。原さんに触れられたのはこの手首だけだ。
「それよりも……警察って……」
わたしは沈んで気弱な顔と声になっていた。
すると、シンちゃんはわたしを抱き寄せて、
「大丈夫……厄介な手続きとかは全部、僕が櫻子の代わりにするからね。
だけど、警察にちゃんと届けておかないと、またこんなことをされるかもしれないよ」
わたしの顔を覗き込む。
仕方なく、わたしはこくり、と肯いた。
それから、シンちゃんはわたしの左手首に湿布をしてくれ、その上から網状の筒になったネット包帯をかぶせてくれた。これらもわたしがお風呂に入っている間に買ってきてくれたものらしい。
わたしが「ありがとう」とお礼を言うと、シンちゃんからは「どういたしまして」と返ってきた。