突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜

「違うの……そうじゃなくて」

わたしは必死で左右に首を振った。

「わたしたち、つい最近知り合ったばかりじゃない?その……エッチをしたのも……昨夜が初めてだし……」

わたしは恥ずかしさのあまり、赤くなって俯く。

「……そうか。
櫻子はおれとのセックスではモノ足りなくて、結婚する気にはなれないんだ?」

……いやいやいや。
そんなこと、わたしがいつ言いました?
じゅうぶん、モノ足りてますともっ!

恥ずかしがってなんていられない。
大河ドラマのテーマ曲並みに壮大さが増しつつある「誤解」には、早急に手を打たねば……

わたしはあわてて顔を上げる。

「違うの……お互いのことをもっとちゃんと理解(わか)り合えてから、結婚を考えた方がいいと思うのよ。勢いだけで結婚して、やっぱりこんなはずじゃなかったって、別れることだけはしたくないの。
わたし……結婚したからには、その人と一生添い遂げたいと思ってるから」

そもそも、わたしは石橋を気長にコンコン叩いてるうちに、ヒビを入れて崩落させてしまう、おうし座のオンナだ。「急な展開と迅速な対応」というのが大の苦手なのだ。

「おれはとっくの昔に、櫻子となら一生添い遂げられると思ってるよ。
……だからこそ、結婚しようって言ったんじゃないか」

シンちゃんは苦悶の表情で眉間にシワを寄せる。

「……じゃあ……いつまで待てばいいんだ?これ以上、おれは、いつまで……」

そして、シンちゃんは思い直したようにまたシートベルトをつけ、ドライブにシフトチェンジして、左足でサイドブレーキを解除したあと、ブリウスを発進させた。

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