突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
コーヒーを淹れ終えた二つのマグカップをトレイに乗せて、わたしは玄関先にある応接間へ向かった。
シンちゃんはまだ玄関で通話をしていた。
「……だから、あおい」
……えっ?
「今日は急に戻れなくなって悪かった、って言ってるだろ?」
……やっぱり、今日も「行くつもり」だったんだ。
わたしは目の前がさーっと、暗くなったような気がした。
どうにかカップを乗せたトレイを落とさないようにして応接間に入り、トレイをローテーブルに置いてから、ソファの上に腰を下ろした。
そして、自分のカップを持ち上げ、淹れたての熱いコーヒーを口に含む。
とにかく、一回落ち着こう。
だけど……みるみるうちに涙が込み上がってきた。
……シンちゃん、『あおい』って、だれ?