突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
不意に、玄関先で物音がした。
わたしは、はっ、として顔を上げた。
……どのくらい時間が経ったのだろう?
いつの間にか、日が陰って辺りが薄暗くなっていた。
わたしは、もう何度目かわからないくらい重いため息を、また吐いた。
次に、応接間のドアがあわただしく開いた。
「……櫻子っ」
……シンちゃんだった。
「玄関のドアに鍵がかかってなくて、びっくりしたよ。ダメじゃないか。不用心過ぎるよ?」
ソファに突っ伏すわたしに駆け寄ってきて、持っていたブリーフケースを脇に下ろす。
「……どうした?
まさか、どこか具合が悪いのか?」
背後から、抱き寄せようとする。
「や…やめてっ!さっ、触らないでっ!!」
わたしは全身全霊で、シンちゃんを拒んだ。
「……櫻子?」
わたしは振り返ったりはしなかったが、その声が驚きに満ちたものであることはわかった。