突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜

「……子どもの頃から今まで、『家』に敷かれたレールに乗せられて……中学からはうちの祖父や父が出た中高一貫の男子校に進んだし、大学だって本当は理一に行って、大学に残って研究者としての道を歩みたかったけれど、逆らうことなんてできず、文二にしたよ。もちろん、卒業後は当然のように、言われるままに今の会社に入った。
……いっさい周囲に刃向かうことなく、ここまで来たんだ」

問わず語りのようにそうつぶやいて、シンちゃんはわたしの耳たぶを、甘く()んだ。

ふうぅっ、とくすぐられるような吐息がかかり、思わず、ぞくり、とする。

「一生をともにする相手くらい……自分の好きなようにするさ」

彼が時折見せる「皇帝」の声であった。

その半端ない「威圧感」は、明治の世から続く老舗の大企業を背負って立つ、その「血筋」のせいだったのだ、と気づいた。

「櫻子……もう、きみを逃がさないよ」

ホレた弱みを差っ引いても、思わず腰が砕けそうになるほどの重低音ヴォイスだ。


……こんなときなのに、とんでもないほど、セクシーさがダダ漏れなんですけれどもっ。

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