きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「……ダメだよ、シンちゃんっ。
あなたの肩にかかってる人たちのことを考えて!
無闇に、身勝手なことは言わないで!
絶対に、無責任なことはしないで!」
わたしはようやく、振り向いて叫んだ。
そして、息を深く吸って、気をしっかりと落ち着けた。
「ううん……家族の人だけじゃなく、あなたが引き継いでいく会社で働く人や、その家族の人たちのことも考えてほしいの。それぞれの人たちの人生にも関わることなのよ?」
「……櫻子……もしかして……知ってるのか……?」
シンちゃんは驚きのあまり、せっかくのイケメンが呆けた顔になっていた。
わたしは、静かに、肯いた。