きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
Book 14
「葛城慎一はかく語りき」
「……だったら、話が早いな」
シンちゃんはスーツの内ポケットから封筒を取り出した。
そして、さらにその中から折りたたんだ紙を取り出す仕草を見ながら。
わたしは彼のスーツのしっとりと静かな光沢を放つ生地や、力みなくすんなり身体に沿ったラインから、それがまさしく「上物」である証だということにやっと気づいた。
祖母の職人技の桐タンスでなければ、こんな上物を虫の「魔の手」から護れるはずなかったのだ。
「櫻子……これが、僕の気持ちだ」
シンちゃんが取り出した一枚の紙を広げて、すーっと差し出した。