きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
Last Book
「これから」
「……やっと、会わせてくれるんですね?」
ディスプレイの向こうにいる人がにやり、と笑っていた。三十代半ばの男性で、自宅にいるのだろうか、寛いだスウェット姿だった。
「……うわぁ、専務のおっしゃるとおり、美しい方ですねぇ」
あたりまえだが、向こうからもこちらが見えているのだ。わたしは照れて俯いた。
「言っとくけど、おれのだからな。
……絶対に、ホレるなよ?」
シンちゃんは真剣な表情と声だった。
ディスプレイの人が思わず、ぶはっ、と噴き出す。
「なに言ってるんですか、専務。
こっちは愛する妻にかわいい愛娘を産んでもらったばかりで、それどころじゃないですよ」
「うるさい、早く自己紹介しろ」
シンちゃんはイライラしながら促した。