突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
Book 5

「営業マンの知」


「……うっわー『イケメンさん』じゃんっ」

真生(まき)ちゃんが息だけでつぶやいた。

ダークブラウンの髪で端正な顔立ちの彼のことを、真生ちゃんはいつも勝手にそう呼んでいた。

カウンターの向こう側にいる、長身にネイビーブルーのスーツを纏ったその「イケメンさん」は、営業の合間に時間潰しで来ていると思われる「常連」のうちの一人だった。

だけど、ほかのサラリーマンたちと違って、彼が机に突っ伏して寝ている姿は、一度たりとも見たことがない。

いつもちゃんと書架にある本を読んでいる、まるで希少本のような人だった。


……いや「図書館」なら、あたりまえの行為なんだけれども。

< 36 / 272 >

この作品をシェア

pagetop