突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
Book 5
「営業マンの知」
「……うっわー『イケメンさん』じゃんっ」
真生ちゃんが息だけでつぶやいた。
ダークブラウンの髪で端正な顔立ちの彼のことを、真生ちゃんはいつも勝手にそう呼んでいた。
カウンターの向こう側にいる、長身にネイビーブルーのスーツを纏ったその「イケメンさん」は、営業の合間に時間潰しで来ていると思われる「常連」のうちの一人だった。
だけど、ほかのサラリーマンたちと違って、彼が机に突っ伏して寝ている姿は、一度たりとも見たことがない。
いつもちゃんと書架にある本を読んでいる、まるで希少本のような人だった。
……いや「図書館」なら、あたりまえの行為なんだけれども。