きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
その日の業務が終わって、「一般社団法人・全国図書館専門管理センター」のロゴ入りのエプロンを取り、プルオーバーとフレアパンツの私服姿になったわたしは、業務中は禁止されているスマホを確認した。
すると、昼間とんでもないお願いをしてしまった葛城さんから、早速「作戦会議」に関するLINEが届いていた。
今夜は接待がキャンセルになったから、これから会って作戦を立てようというのだ。
怖気づいたわたしは真生ちゃんに相談すると、
『なに言ってるんですかっ。
櫻子さんは自らストーカーの魔の手に堕ちたいんですかっ!』
と叱られ、葛城さんとの待ち合わせ場所である華丸百貨店前まで、引きずるようにして連れてこられた。
てっきり、真生ちゃんも作戦会議に「参謀」として参加してくれると思ったら。
葛城さんを見つけるなり、
『葛城さん、櫻子さんをお願いしますね!
では、あとはお若いお二人で……』
自分が一番歳下なのに、まるでお見合いの仲人さんみたいなことを言い、
思わず苦笑する葛城さんを尻目に、とっとと雑踏の中へ消えて行った。
それから、葛城さんに連れて来られたのが、花丸百貨店に入っている高級宝飾店「カルティエ」である。←今ここ。