きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜
「で、葛城さんはあっちの方はどうでした?」
……どっちの方?
「やだなー。だから、カマトトぶらないでくださいってぇー!」
真生ちゃんはぷうぅっと膨れる。
「でもなぁー、ああいうイケメンって、一見女慣れしたテクニシャンかと思いきや、相手から仕掛けられることが多いから、案外ご奉仕知らずの『マグロ男』だったりするんですよねぇ。
そいで、『こんなはずじゃなかった』ってフラれちゃうんだなー。
……で、葛城さんはどっちでした?」
「しっ…知らないわよっ!かっ…葛城さんは客間で一人、客用布団で寝たからっ!!」
わたしの頬は真っ赤になっているはずだ。
「……ええぇっ!? まさか、まだ寝てないんですかっ!? 確か葛城さんは、金曜の夜から櫻子さんのおうちで同棲を始めたんですよね?」
……「同棲」じゃなくて、「シェアハウス(仮)での同居」っ!
「うわーっ、そりゃぁー『適齢期』の年代の人たちがそんなに『健全』だったら、この国が少子化になるわけだぁー」
真生ちゃんは妙なところで感心している。
いや、わたしたちの年代をディスっているのか?
「金・土・日と一緒にいて、櫻子さん相手に欲情しないって、ちょっと考えられないんだけど。
櫻子さんって『昼は淑女で夜は娼婦』って感じするんですよねー。隠れ巨乳だし。
もしかして……葛城さんって、まさかのゲイ?
年齢も思ってたよりいってたのに、まだ独身みたいだし……そういえば、ニューハーフのオネエじゃなくて、ガチの真性ゲイにありがちな風貌に見えなくもないなぁ」
真生ちゃんは眉間にシワを寄せ、うーんと唸って考え込む。
……とにかく、大きなお世話以外の何物でもないんだけれども。