きみの左手薬指に 〜きみの夫になってあげます〜

「で、葛城さんはあっち(・・・)の方はどうでした?」

……どっちの方?

「やだなー。だから、カマトトぶらないでくださいってぇー!」

真生ちゃんはぷうぅっと膨れる。

「でもなぁー、ああいうイケメンって、一見女慣れしたテクニシャンかと思いきや、相手から仕掛けられることが多いから、案外ご奉仕知らずの『マグロ男』だったりするんですよねぇ。
そいで、『こんなはずじゃなかった』ってフラれちゃうんだなー。
……で、葛城さんはどっちでした?」

「しっ…知らないわよっ!かっ…葛城さんは客間で一人、客用布団で寝たからっ!!」

わたしの頬は真っ赤になっているはずだ。

「……ええぇっ!? まさか、まだ寝てないんですかっ!? 確か葛城さんは、金曜の夜から櫻子さんのおうちで同棲を始めたんですよね?」

……「同棲」じゃなくて、「シェアハウス(仮)での同居」っ!

「うわーっ、そりゃぁー『適齢期』の年代の人たちがそんなに『健全』だったら、この国が少子化になるわけだぁー」

真生ちゃんは妙なところで感心している。
いや、わたしたちの年代をディスっているのか?

「金・土・日と一緒にいて、櫻子さん相手に欲情しないって、ちょっと考えられないんだけど。
櫻子さんって『昼は淑女で夜は娼婦』って感じするんですよねー。隠れ巨乳だし。
もしかして……葛城さんって、まさかのゲイ?
年齢も思ってたよりいってたのに、まだ独身みたいだし……そういえば、ニューハーフのオネエじゃなくて、ガチの真性ゲイにありがちな風貌に見えなくもないなぁ」

真生ちゃんは眉間にシワを寄せ、うーんと唸って考え込む。


……とにかく、大きなお世話以外の何物でもないんだけれども。

< 72 / 272 >

この作品をシェア

pagetop