突然婚⁉︎ 〜きみの夫になってあげます〜
Book 8
「井筒櫻子の憂鬱」
結局、高校生の下校時みたいに自転車を二人乗りして駅から家まで帰ってきたのは、あの日だけとなった。(道路交通法に違反してるしね)
なぜなら、区立図書館の分館までの行き帰りを、葛城さんが自宅から持ってきた(乗ってきた?)車で送ってくれるようになったからだ。
TOMITAのハイブリッドカーのブリウスが葛城さんの愛車だった。
行きは一緒にブリウスで家を出て、分館でわたしを下ろしてから、葛城さんはすぐ傍にある萬年堂へと出勤する。
そして、帰りはわたしが分館近くのカフェで待機していると、葛城さんからLINEで連絡が入って外に出たらブリウスがいてピックアップされる。
葛城さんは営業マンだし、終業後には接待などがあるんじゃないかと、わたしは何回も『一人で電車で帰れます』と言うのだが……
その度に葛城さんは、
『もしも櫻子さんに取り返しのつかないことが起こってしまったら、僕は悔やんでも悔やみきれないからね』
と言って、取り合ってくれない。
葛城さんの手を煩わせて申し訳ない、とは思いつつも、やはりわたしだって巷で話題にのぼるストーカーというものには恐れをなしているから、ついつい甘えてしまうことになる。