キミの好きをください。
あれは中学生の時。

数学の点数がなんとも悲惨で人に見せられないし自慢もできない点数だった。



数学担当の先生は『人に教えれば定着するし、教えられた方も理解するしwin-win』的なことを言っていて、


点数が悪かった人間は点数良かった人間に聞かなければならない。



点数が悪かった人間にとっては少し嫌な制度だった。



亜貴はいつも通り満点に近い点数で色んな人(主に男子)に呼ばれて引っ張りだこだった。



(いいなぁ…男子は。私も素直に言いたいけど、馬鹿にされて喧嘩するのがオチなんだよなぁ…)



その頃まひろたんとはクラスが離れてしまっていて、亜貴のことを相談する友達は居なかった。



亜貴を呼んだ男子の近くに女子もいて一緒に教えていたのが見えた。



その時の亜貴は私と接する時と180度違ってて



「亜貴くん、ここは?」

「ん?あー、ここ?式はあってるよ。計算がどこかで間違ってる。」



なんて会話が聞こえてきて




(…なんだ。他の女子には優しいんだ。)



一気に沈んだ私は机に突っ伏した。



「森永、お前何点?」


小学校までは『凛』だったのに。とか

さっきまで別の子に教えてたのに。とか


色々思うところはあるのに半笑いでおちょくりに来たのがわかっているのに亜貴が来ただけで胸がうるさくて。



「い、いやだ。亜貴には見せないし!言わない!」

「はぁ?なんでだよ」

「絶対笑うから!」

「お前っ…また悪い点数なんだろ?」


既に馬鹿にされてるし笑ってるし頑なに私のテスト用紙から手を離さないし、どんだけ私を笑いたいんだと思うのに



思うのに。



憎めなくて。


「それだけ分かったならいいでしょ!もう!あっち行って!」



天邪鬼だから、思っている事と反対のことを口にして

我ながらめんどくさい女だ。と思いつつ『行かないで』と思うと


亜貴はそれを分かっているのか分からないけど


「やだね。まだお前の点数知らないし、それにお前、自力で直せんの??」


「な、直せるし!…点数知らなくても死なないでしょ!!」



って言ってるのに、近くの椅子を引っ張ってきて私と一緒にいてくれた。




「ほら、直してみろよ」

「うるさいなぁ…」


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