マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
気が付けば、とっくに辺りは暗くなっている。
野球部のグランドの方から投光器の灯りが差し込んでいた。
野球部も遅くまで練習してるんだ…。
そう思いながら、体育館の更衣室から制服を入れたバッグを持ち出す。
野球部の練習、遠目から覗いてみようかなと、野球部のグランドの横を通り過ぎて部室に戻ろうと思った。
しかし、そこへ。
硬式の野球ボールが、コロコロとスピードをつけて転がってくる。
(あ、ああ…)
スピードをつけた野球ボールは、私の横を通り過ぎて、弾みをつけて茂みの中へとバスッと音をたてて入っていった。
あ、あらあら…。
思わずその後を追ってしまう。
草むらの茂みを掻き分けると、そこにボールが留まっていた。
あ、こんなとこまで…。
野球部のファールボールかな。
無いと困るから、拾って持っていってあげよう。
留まっているボールに手を伸ばした。
…その時だった。
茂みの向こうから、人の声が聞こえる。
「…ホント?いいの?」
「いや、別に…」
耳を澄ましてみると、それは男女の会話だった。
しかし、それは…聞き覚えのある声。
「ありがとう!嬉しい…瞳真くんが付き合ってくれるなんて」
「村河が俺でいいって言うなら、いいんだけど…」
(え…)
…何?この会話。
目の前の茂みを掻き分けて、向こうをそっと覗く。
まさか…と、思い。
その手は、震えていた。