マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
「………」
みんな、返す言葉もないのか、絶句している。
だけど、私はそんなみんなの顔を見ることが出来ない。
顔を上げることが、出来ない。
下に向けた視界すら、滲んでぼやけてきた。
「…みんなに置いていかれるような気がして…逃げた…ごめん…」
『大丈夫』を言い続けた、その代償は。
私を孤独にし、現実逃避させた。
私に、サッカーと向き合うことをやめさせた。
「…何で、そんなこと考えたのか、今となってはわかんない…だって…」
数々の場面が、頭の中を過る。
それは、部活で。
部員の練習を、マネージャーとして見守る私。
ふと、手を止めて、思いを馳せる。
(やっぱり…サッカーやりたい)
もう、涙が溢れ落ちてしまった。
「だって私、今…サッカーやりたいもん…」
「星月…」
そう言い放つと同時に、たまらずそこから駆け出していた。
まるで、走って逃げるかのように。
「…星月!待って!」
いつきの呼び止める声が聞こえたけど、立ち止まることは出来ない。
これ以上、感情を吐露してしまうと、収拾がつかなくなると思った。
涙が止まらなくて。
行き交う人混みの中を、すり抜けるように夢中で走って通り抜ける。
何かの脅威から逃げるように。
宛もなく走って走って。
私は、また逃げた。