マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
一気に目頭が熱くなって、どっと涙が出てくる。
何とも言えない嫌な感覚がまとわりついた。
嫌だ。嫌だ…。
…これは、あの時と全く同じ光景。
何で、見てしまったの…?
「…っつーか、いつまで見てんの?」
急に耳元で囁く声がサクッと入ってくる。
耳にかかる吐息に、腹の底がビクッとして悲鳴が出る。
「ぎゃっ!…」
「しー。向こうに聞こえちゃうよ?」
悲鳴を出し切る前に、後ろから口を塞がれる。
口の中で悲鳴が止まってしまった。
その声と手の主は、うひひ…と笑っている。
「杉久保さん、覗き趣味?わぁーやらしい」
「………!」
反論したいが、口が塞がれて声が出ない。
彼の手の中で、口がもがもがと動くのみとなっていた。
私の口を塞いだ男。
正体はもうわかった。
「…あれ?…あれ、水口じゃん。チューしてたの、サッカー部のマネの村河でしょ。あの二人同じクラスだっけな」
「…もごご…ふがっ!」
「で、何で見ながら泣いてんの?」
「………」
「あー。ひょっとして、水口のことラブだった?…三位だけど。うひひ…」
ちょっと…蓑島くん!
事実だけど、言われたくないことをすっぱぬかれてカッとなってしまう。
おもいっきり腕を振り切って暴れ、彼の手から逃れた。
「…ちょっ!…蓑島くんっ!」
「わわっ!…しーっ!き、聞こえる!」