マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
「…私、逃げてばっかり。未だに自分のサッカーや仲間から逃げてるの」
自分のやるべき方向、居場所は見つけたかもしれない。
でも、肝心なことは放ったらかしのままだった。
「…そうかな」
意外な返事が返ってきたことに、思わず顔をあげてそう言った隣にいる人の顔を見てしまう。
彼の視線は、少し向こうの行き交う人や車の風景だった。
「最後逃げちゃっても、言いたいこと言えてたと思うよ?」
「そ、そうかな…」
「それに『逃げるが勝ち』ってのもあるし、逃げることは別に悪いことじゃない。ちょっと遠回りしただけと思えばいい」
「………」
これは、甘やかされているのか、本当にその通りなのか。
わからないな…。
「星月は真面目過ぎる。そんなの『やっぱ大丈夫じゃなかったですー!てへぺろー!』で良いんだよ。そんなの」
「………」
てへぺろー!は言えない…。
「…でも、みんなはわかってたと思うけどね?あの様子だと」
「うん…」
「みんな、待っていたかったのかもしれない。でも、時間って限られているから嫌でも前に進んで行かなきゃいけないんだ。みんな別に星月を放っておいたワケじゃないと思う」
「………」
「少なくとも、あのまこっちゃんは、前に進みながらも、ずっと後ろを振り返ってたと思うよ?」
「………」
それは…わかっていた。
何となく、そんな気がしていた。