マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様

苦すぎる追憶の味

***






「…あ、ボールこんなところにあったのか」



私達の座っているすぐ傍には、硬式野球ボールが留まっていた。

それは、私が追いかけていったボール。



これを追いかけなければ…あの二人のキス現場を見ることはなかったのに。



「俺、これ探しに来たんだよ。そしたら、杉久保さんが覗き見…」

「…やめい!その言い方!」

「てなわけで、何があったか教えて?」

「えっ…」



目の前の蓑島くんは、いつもの不敵な笑み、ドヤ顔を浮かべている。



「だって、キス現場見て泣いちゃうほど、水口が好きなんでしょ?楽しい話、こさえてんじゃねえのー?」

「………」

ムッとさせられる。

楽しい話?…全然楽しい話じゃない。



私の瞳真への片想い話は、非常にドス暗いものだ。



黙ったままでいると、蓑島くんはまた「あはは」と笑う。



「…泣いちゃうほど溜め込んでるなんてさ?誰かに聞いてほしいんじゃないのかな?とも思った」

「………」

「どうせ、誰にも話せてないんだろ?杉久保さんはしっかり者で、誰にも甘えない感じだしね?」



それは…図星かもしれない。

斗弥子と彩里には、話しているけど。

二人を信頼してるからこそ、ようやく始めてこの想いを誰かに話すことが出来た。



それぐらい、誰にも話せてなかった…。



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