マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様
わかってる。でも…。
その愛の叫びに、一瞬でも胸がときめいてしまった自分がいた。
初対面の何も知らない相手に、挨拶のように放たれたその一言に。
私のこと、何も知らなくて。
その中身は非常に薄っぺらくて、何の愛情もこもっていないはずの一言なのに。
強いて言えば、軽ーく感謝?が込められているかもしれないけど?
でも、何故か。
胸の高鳴りは止まない。
何でだろう…。
立ち尽くしたまま、動けなかった。
しばらく戻ってこない私を探しに来た瞳真に声をかけられるまでは。
胸の高鳴りが治まらないまま、座っていた観客席に戻る。
そこで間もなく見たのは。
その彼が放ったホームランだった。
キレイなキレイなアーチを大きく描いて、センター方向ど真ん中のフェンスを悠々と越えるボール。
大歓声と共に、思わず私は立ち上がってしまった。
ホームランの入ったその方向に体を向けたまま。
屈託のない笑顔でダイヤモンドをゆっくりと走る彼を目で追って。
高鳴りの止まない胸を抱えたまま。
しばらく、その場に立ち尽くしていた。