マイラヴレディ~俺の愛しいお姫様




…目の前の景色がフッと消え、灯りが伴う黒一面となる。

地下鉄が距離を走らせ、地下道に入った。




もう、蓑島くんがみんなの前でああやって叫ぶから、遠い昔の記憶が甦ってしまった。

とても不思議な体験。



四つ葉のクローバーひとつ手にしただけで。

有言実行ホームランが打てちゃう件。



でも…ホームランは、彼の元々持っていた実力だったんだと思う。

それを、四つ葉のクローバーひとつでメンタル上昇し、力を引き出した。

勝負強さを持っていたんだろう。



…でも、そんなことよりも、私の記憶に強烈に残っているのは、やはり突然の『愛してる』だったりして。

あの時に感じたくすぐったさは今でも忘れられない。

あのやり場のない、感覚…。



そんなことを考えているうちに、地下鉄は終点の駅に着いた。

ドアが開くと同時に、一斉に人間が溢れるように地下鉄を降りる。



着いた。

球場まで、もう少し…!



そう考えると、逸る気持ちで次第に足は速まる。

改札を抜ける頃には、またダッシュをするカタチとなっていた。



人の波をすり抜けて、足早に階段を掛け上がる。

地上に出ると、さっき何度もスマホを見て確認をして覚えた通りの道を走った。


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